【第2回】乾燥機を止めても、危険は下流へ移動する 搬送・集じん・貯蔵に残る火災リスク

木質燃料の堆積高さが増すほど内部の蓄熱域が拡大することを示す概念図

前回の記事では、回転ドラム乾燥機の火災が「水による冷却を失った瞬間」に始まること、そして出口側の閉塞・滞留が重要な起点になることを述べました。

これには続きがあります。乾燥機を止めても、危険はそこで終わりません。 熱を持った材料は、コンベヤへ、集じん設備へ、そしてサイロへと運ばれていきます。危険も一緒に移動します。

本稿では、乾燥機の下流で何が起きるのかを整理し、検知と停止シーケンスをどう設計すべきかを示します。前回の記事と同じく、経済産業省「令和6年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(バイオマス発電設備の事故防止のための調査)」において、固体バイオマス燃料の燃焼・火災・爆発の原理を扱う章を執筆した立場からの整理です。

目次

1. 火災リスクは、乾燥機本体だけでは終わらない

発火箇所の業界横断的な統計は乏しく、内訳の割合を断定するのは適切ではありません。弊社の調査事例にはドラム内部の発火もあります。重要なのは「本体か下流か」の二択ではなく、熱履歴を持った材料が下流へ移動した後も危険が続くことです。

図1 熱履歴を持った材料がたどる経路と、各工程で確認すべきこと

集じん設備は、粉じん爆発の条件がそろいやすい場所

前回の記事で、ドラムの中で最初に乾ききるのは微粉だと述べました。その微粉が最も濃く集まる場所が、サイクロンとバグフィルタです。

粉じんが爆発するには、可燃性の粒子、発火源、酸素、粉じんの分散、場の閉塞性という5つの要素が必要です。通常の空気搬送を行う集じん設備では、可燃性微粉、酸素、分散、閉塞性の4条件がそろいやすく、残る発火源が上流から持ち込まれると、爆発条件が成立します。

そして発火源は、上流から運ばれてきます。乾燥機や搬送機内で生じた火の粉、またはくすぶり粒子が到達すれば、条件がそろうおそれがあります。

搬送経路にも、材料が溜まりやすい箇所がある

乾燥機の出口から貯蔵までの間、材料は動き続けているように見えます。しかし実際には、乗継部、シュート、バケットエレベータの底部など、材料が滞留・堆積しやすい箇所があります。

弊社の実務で優先して確認するのは、次の3か所です。

  • 乾燥機出口ブリーチングからロータリーバルブ/スクリュー入口まで(断面変化と湿潤材料の付着)
  • 乗継シュート・ダクト曲がり部・バケットエレベータのブート部(流れの方向と速度が変わる箇所)
  • サイクロン/バグフィルタのホッパと排出スクリュー(微粉が濃縮され、排出停止時に短時間で堆積する箇所)

共通するのは、流速が落ちる、断面が変わる、または排出機器の停止で行き場を失う場所です。設計図上の「通過点」ではなく、停止時に材料がどこへ残るかを確認します。

前回述べた「乾燥のための滞留が、火災につながる滞留に変わる」という構図は、乾燥機の外でもそのまま成立します。しかも下流には、ドラムのような温度計もCO計も設けられていないことが多い。異常が進行しても、気づく手段がありません。

サイロの自然発火:小さな山では冷めるものが、大きな山では冷めない

貯蔵中の燃料が外部の火種なしに発火する、いわゆる自然発火です。堆積した可燃物がどの温度から危険になるかは、フランク-カメネツキーの熱発火理論で説明されます。堆積層が厚くなるほど、より低い温度で危険側に入ります。発熱は体積に比例して増えるのに対し、放熱は表面積に比例するためです。

発熱を始めるのは、必ずしも上流から運ばれた熱ではありません。 木質燃料は吸湿すると発酵が始まり、45℃程度までは中温性の微生物が、45〜65℃では好熱性の微生物が熱を出します。65℃を超えると主役が化学的な酸化に移り、105℃程度を超えると酸化が急速に進みます。つまり、乾燥機が正常に動いていても、貯蔵側だけで発熱が立ち上がることがあります。

湿った空気の流入や結露によって局所的に水分が集中すると、この経路が始まります。だからこそ、貯蔵側には貯蔵側の監視が要ります。上流を止めたから安全、とはなりません。

図2 堆積高さの増大に伴う内部蓄熱と発火リスク(フランク-カメネツキー理論に基づく概念図)

消防庁の「バイオマス発電のため指定可燃物として木質ペレット等を貯蔵等する施設における保安対策の調査等報告書」(令和7年3月、危険物等事故防止対策情報連絡会)には、この理論を海外産木質ペレット4種類に適用した推算が引用されています。試料温度30℃の条件で、発熱・発火危険が表れるモデル上の発火限界直径(臨界径)は、ある銘柄では約6m、別の銘柄では23mと、4倍近い開きがありました。同じ「木質ペレット」でも、品質差によって発熱限界の推算結果が大きく変わるということです。

ただし、この数字を安全限界として使うことはできません。無限円筒という理想化した条件での簡易推算であり、報告書自身が「実際の安全性の評価の目安とするには十分な信頼性がない」と明記しています。同じ推算では、発火に至るまでの期間も30℃で2年半から20年と大きく幅が出ています。

すべての燃料に共通する安全な投入温度や堆積高さは存在しません。燃料ごとの自己発熱性、貯槽の径と高さ、貯蔵期間、放熱条件を組み合わせ、中心温度とCOの推移で管理する必要があります。

実務では、すでにこう管理されている

同じ報告書には、稼働中の5事業所へのヒアリング結果が収録されています。公開情報として、自社の設備と比較する材料になります。

  • 貯蔵庫全体をサーモカメラで監視し、表面温度50℃で警報
  • 積み上げ高さを5mに制限し、柱に目印を設置
  • サイロは上・中・下の3点で温度を監視
  • サイロ頂部で酸素・一酸化炭素・メタンを測定
  • コンベヤ速度を通常の7〜9割に落として粉じん発生を抑制

このうちサイロ頂部でのCO測定は、前回述べたCO監視の考え方が、すでに現場で実装されている例です。一方で、サーモカメラによる監視には限界があります。表面温度は、堆積の中心で起きている蓄熱を直接は捉えません。 危険が育つのは中心であり、そこが最も放熱しにくい場所だからです。表面が平穏に見えることは、安全の証拠にはなりません。

2. どこで止めるか — 火災検知と設計の実務

では、何をどう設計するか。

先に結論を述べます。止め方には順序があります。 個々の警報や停止装置をいくら並べても、作動する順序が決まっていなければ、安全な状態には到達しません。既設設備の火災リスク評価でも、まずこの順序を確認します。

停止シーケンスは、一続きで設計する

インターロックは個別の警報の集合ではなく、「出口停止・詰まり検知 → 熱源即時遮断 → 新規供給停止 → 負圧管理 → 材料の安全排出」を一つの停止シーケンスとして設計する必要があります。設備を止めるだけでは、安全な状態にはなりません。

設計時に確認すべき7項目

  • ① 出口機器のトリップ・詰まりを、熱源遮断の直接トリガーにしているか
  • ② 温度HHだけでなく、入口・出口の差分CO、温度上昇率、回転・差圧信号を組み合わせているか
  • ③ 火花検知・消火の候補点を乾燥機出口〜サイクロン入口に置き、搬送速度から必要な検知・消火距離を決めているか
  • ④ 停止時に「熱源遮断→新規供給停止→密閉排出またはクエンチ」まで自動化し、IDファンは負圧維持と延焼拡大の両面から継続時間・停止条件・非常電源を定めているか
  • ⑤ 散水設備が手動元弁方式の場合、元弁を常時開・札掛けとし、検知から放水までの時間と到達範囲を確認したか
  • ⑥ 出口ロータリーバルブとスクリューに能力・トルクの余裕があり、原料変動と起動時ピークを踏まえて通常負荷の上限を定めているか(目安として7〜8割程度)
  • ⑦ 製品を冷却してから貯蔵し、貯蔵量・堆積形状・投入温度に応じて中心温度とCOを監視するか

IDファンを止めるか、回し続けるか

7項目のうち、現場で最も判断に迷うのが④です。

異常を検知したとき、誘引通風機(IDファン)は止めるべきか、回し続けるべきか。答えは一つに決まりません。

止めれば酸素の供給が減り、燃焼の拡大を抑えられます。しかし同時に負圧も失われ、高温のガスや煙が機外へ漏れ出します。これは作業員の安全に直結します。

回し続ければ負圧は保たれますが、空気を送り続けることになり、くすぶりを本格的な火災に育てる可能性があります。

したがってこれは、その場で判断する事項ではありません。 継続時間、停止条件、非常電源の要否を、平常時にあらかじめ決めておく必要があります。決めていなければ、当日は必ず迷います。

出口機器に余裕を持たせる理由

⑥の「原料変動と起動時ピークを踏まえて通常負荷の上限を定める」は、一見すると過剰な設計に見えるかもしれません。

しかし前回述べたとおり、火災の起点になりやすいのは出口の閉塞です。ロータリーバルブやスクリューコンベヤが定格ぎりぎりで回っている設備は、原料の性状が少し変わっただけでトルクが上限に達し、トリップします。能力の余裕は、そのままトリップ頻度の低さになります。

追加容量に伴う設備費は、一度の火災による停止損失との比較で検討すべきです。

なお経済産業省の同調査報告書でも、搬送・貯蔵設備における温度・可燃性ガス監視、散水、異物除去、シュート詰まり等を停止条件とするインターロックが、実設備の対策例として整理されています。ただし同報告書は本稿の7項目と同じ順序を定めた設計基準ではありません。本稿のチェックリストは、報告書に示された対策と弊社の事故調査経験を、停止シーケンスの観点から再構成したものです。

3. まとめ

  • 乾燥機を止めることと、安全な状態にすることは、別の設計です。停止シーケンスとして一続きに組む必要があります
  • 危険は下流へ移動します。集じん、搬送、貯蔵までを一続きの系として見てください
  • 表面温度は、中心の蓄熱を捉えません。中心温度とCOで見ます
  • 燃料が変われば、自己発熱の限界条件も変わります。他社の堆積寸法をそのまま持ち込むことはできません

乾燥機の火災がなぜ起きるのか、その因果については前回の記事で扱っています。あわせてお読みください。

参考文献

補足:当事務所が開発した乾燥機について

以下は当事務所が開発した製品に関する記述です。本文の技術的な整理とは切り分けてお読みください。

当事務所が開発した低温温水式連続乾燥機 Dried Sieve® は、約80〜85℃の温水を熱源とし、温水式熱交換器でつくった低温温風によって木質チップを乾燥します。3本の可変速スクリューでチップを攪拌しながら連続搬送し、メッシュを通過した微粉も専用フィーダで連続排出するため、回転ドラム乾燥機で問題となる出口閉塞や局所的な長時間滞留を生じにくい構造です。

また、バーナの火炎や高温燃焼ガスをチップに直接接触させないため、過乾燥した微粉やくすぶり粒子を後段へ送り出し、集じん・搬送・貯蔵設備で発火に至るという、本稿で扱った発火シナリオを構造的に回避しています。

ただし、停止時の残留、異物の噛み込み、軸受の過熱など、一般的な機械設備としてのリスクがゼロになるわけではありません。停止時の排出手順と温度・駆動監視は引き続き必要です。

搬送・集じん・貯蔵まで含めた火災リスクの評価について、設備を販売しない第三者の立場からの検証が必要な場合は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。技術士法第45条により、いただいた情報は秘密保持契約の有無にかかわらず保護されます。

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この記事を書いた人

笹内 謙一のアバター 笹内 謙一 代表取締役 / 技術士(総合技術監理・衛生工学部門)

株式会社PEO技術士事務所 代表取締役。技術士(総合技術監理/衛生工学部門)、技術士登録番号87790号。大手プラントエンジニアリング会社を経て、2019年に当事務所の代表取締役に就任。バイオマス発電・ガス化発電の技術評価、燃料乾燥装置の開発、事業性評価を専門とし、設備を販売しない中立の立場で発注者側の技術支援を行っています。経済産業省「令和6年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(バイオマス発電設備の事故防止のための調査)」では、固体バイオマス燃料の燃焼・火災・爆発の原理と事故の類型化を扱う章を執筆。NEDO「バイオマス技術導入ガイドブック」、日本木質バイオマスエネルギー協会「バイオマスボイラー導入マニュアル」の作成にも関与。木質チップ乾燥装置 Dried Sieve®(特許第7875570号)の発明者。バイオマスガス化発電の係争案件では、裁判所選任の技術鑑定人を務めています。

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