タールを測る ― ガスのどこで何を測れば炉の状態が分かるのか(バイオマスガス化とタールの科学 その4)

執筆:笹内謙一(PEO技術士事務所) 監修:香月正司(大阪大学名誉教授)

シリーズ「バイオマスガス化とタールの科学」(全6回)

※ その5・その6は順次公開予定です。

目次

はじめに ― 原因探しは「測っていない」ことから始まります

前回は、タール対策には炉の中で分解する一次対策と、炉の外で取り除く二次対策の二つの道があり、どちらにどれだけ頼るかは炉の形式と、廃水・廃棄物の処理まで含めた設備全体で決まる、というお話をしました。では、その対策はうまくいっているのでしょうか。これは、測ってみなければ分かりません。

ところが実際にトラブルの原因を調べようとすると、まず困るのが「測っていない」ことです。設備のフロー図にはガス分析装置が描かれているのに、そこでの測定値が残っていない。エンジンが止まった原因を追及しようにも、突き合わせる数字がない。分析は面倒だ、難しいといって先送りにしているうちは、議論はなかなか前に進みません。今回は、ガスの通り道のどこで、何を、どう測れば炉の状態が分かるのかを整理します。

どこで測るか ― 基本は「受け渡し部」です

測る場所は、知りたいことによって変わります(図1)。

図1 ガスの通り道と測定点 ― どこで測ると何が分かるか
図1 ガスの通り道と測定点 ― どこで測ると何が分かるか

炉の出口(図1の①)で測れば、一次対策が効いているかどうか、つまり炉の中でタールがどれだけ分解されたかが分かります。ただし、ここのガスは高温で、タールも微粒子も多く、測るのがいちばん難しい場所でもあります。

除去装置の前後(図1の②と③)で測れば、その装置でどれだけタールが取れているか、つまり除去率が分かります。小さな実験装置の例ですが、スクラバーの直後とエンジンの直前の二か所でタール濃度を測ったところ、その間で大幅に下がっていた、という報告があります。装置のフロー図には描かれていなかったストレーナやフィルター、そして途中に設けたリザーブタンクが効いていたと考えられます。前回お話しした「ミストは流速の遅い場所で分離される」ことの裏づけでもあります。

そして、いちばん基本になる測定点は、ガス化設備からエンジン設備へ燃料ガスを受け渡す位置、多くの設備ではガス誘引ファンの直後です(図1の④)。ここの値は、ガス化側がエンジン側に対して「この品質のガスをお渡しします」と約束する数字であり、いわば成績証明書です。トラブルが起きたときに、原因がガス化側にあるのかエンジン側にあるのかを切り分ける根拠にもなります。設備を計画するときには、この位置にガスを取り出せる口を設けておくことをお勧めします。

測定点を決めるときに、もうひとつ気をつけることがあります。ガスを取り出す管そのものです。取り出し管の温度がガスの露点より低ければ、タールはその管の中で凝縮してしまい、分析装置には届きません。そうなると、測った値は実際より低く出ます。後で述べる正式な測定法で、採取管とフィルターを加熱しておくことが決められているのは、このためです。

何を測るか ― 四つの量

測る対象は、大きく四つに分けられます(表1)。

表1 タールの管理のために測る四つの量

測る量単位と目安分かること測り方
タール濃度mg/Nm³
エンジン向けの目安は50〜100以下という例
ガスにどれだけタールが含まれているかタール・プロトコル(採取30分〜数時間、分析は実験室)、SPA法
露点℃
通り道の最低温度と比べて判断する
どこでタールが凝縮するか(詰まるか)露点計(光学式)、成分組成からの計算
微粒子mg/Nm³
エンジン向けの目安は5〜10以下という例
チャーの粉や灰の量。タールと混ざって固まるタール・プロトコルの加熱フィルター部
ガス組成・温度・差圧vol%、℃、kPa
メタン2%以下で良好、4%以上で停止という例
熱分解の進み具合、通り道の最低温度の位置、機器へのたまり具合連続ガス分析計、熱電対、差圧計(常時測れる)

※ 目安の数値は出典と前提(エンジンの形式、想定する運転時間)によって異なります。本文および参考文献を参照してください。

一つめはタール濃度です。標準状態のガス1m³あたり何ミリグラムのタールが含まれているか、という値で、mg/Nm³という単位で表します。

二つめは露点です。第2回でお話ししたとおり、タール蒸気が液体に戻り始める温度で、設備を詰まらせるかどうかを実際に決めているのはこちらです。

三つめは微粒子(ダスト)です。チャーの粉や灰がガスに乗って出てきます。タールと混ざり合って固まるので、タールと微粒子は両方を測る必要があります。

四つめはガス組成と温度・圧力です。水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素、窒素といった成分の割合と、通り道の各点の温度、そして機器の前後の圧力差です。これらは連続して測れますから、運転の状態を見張る役に立ちます。

目安の値については、注意が必要です。エンジンに渡すガスの品質として、タールは50〜100mg/Nm³以下、微粒子は5〜10mg/Nm³以下という数字がよく引用されます。一方、木ガスを自動車の燃料に使っていた時代の資料には、タール500mg/Nm³以下、ダスト50(できれば5)mg/Nm³以下、酸分(酢酸として)50mg/Nm³以下という値が示されています。両者の値は大きく違いますが、これはどちらかが間違っているというより、前提としているエンジンと運転時間、加えて測定法(後述)が違うためだと考えられます。目安の数字を引用するときは、必ず出典とその前提を確かめてください。そして本シリーズで繰り返しているとおり、濃度の目安を満たしていても、重いタールが残っていれば露点が下がるとは限りません。

正式に測る ― タール・プロトコル

タール濃度をきちんと測る方法は、国際的に標準化されています。欧州規格のCEN/TS 15439、通称「タール・プロトコル」です(図2)。

図2 タール・プロトコルの捕集列(模式図)
図2 タール・プロトコルの捕集列(模式図)

考え方は単純です。ガスの通り道から一定量のガスを吸い出し、まず加熱したフィルターで微粒子を取り除きます。次に、溶媒を入れた洗気瓶(ガス洗浄びん)を並べた列にガスを通し、タールを溶媒に溶かし込みます。洗気瓶は常温に近い側と、氷や塩で冷やした低温側に分けて並べ、重いタールから軽いタールまで順に捕まえます。同時に、通したガスの体積を測っておきます。

集まった溶液からは、二通りの数字が得られます。ひとつは、溶媒を蒸発させたあとに残った重さから求める「重量法タール」。もうひとつは、ガスクロマトグラフという分析装置にかけて、ナフタレンやフェノールといった成分ごとに定量し、その合計として求める「GC検出タール」です。

ここが大事なところです。同じガスを測っても、測定法が違えばこの二つの数字は一致しません。重量法は、溶媒と一緒に蒸発してしまう軽いタールを取りこぼします。逆にGC検出は、分析装置で捉えられないほどの重いタール(第2回のクラス1)を取りこぼします。「タール濃度は○mg/Nm³です」という数字を見たら、どちらの方法で測った値なのかを必ず確かめてください。なお、重量法には実用上の下限があり、おおむね500mg/Nm³程度より低い濃度では使いにくいという指摘があります。

規格が想定している適用範囲は、タールが1mg/Nm³から300g/Nm³まで、微粒子が20mg/Nm³から30g/Nm³まで、採取点の条件は0〜900℃・60〜6,000kPaと、かなり広くとられています。ただし、採取には30分から数時間かかり、分析は実験室で行います。運転しながらその場で読むための方法ではない、ということです。

もっと手軽な方法もあります。注射器で少量のガスを吸い、吸着剤を詰めた小さなカートリッジに通してタールを捕まえる固相吸着法(SPA法)です。採取そのものは短時間で済みますが、成分の抽出と分析にはやはり時間が掛かります。正式法との比較試験も報告されていますが、捕まえられる成分の範囲は正式法と同じではありません。値を比べるときは、測定法をそろえる必要があります。

露点を測る、見積もる

タール濃度が分かっても、「では、どこで詰まるのか」には直接答えてくれません。それに答えるのが露点です。

露点を直接測る装置も作られています。冷やした面に光を当てておき、その面にタールが凝縮し始めると光の反射が変わります。その変化を捉えた温度を露点とする、という仕組みです(図3)。試作機で25〜170℃の範囲を測れたと報告されています。実際に必要な測定範囲は、炉を出たばかりの生ガスで60〜350℃、水で洗ったあとのガスで20〜60℃、高度な除去装置を通したあとのガスで60℃以下とされています。

図3 タール露点計の原理 ― 冷やした面への凝縮を光で捉える
図3 タール露点計の原理 ― 冷やした面への凝縮を光で捉える

装置を持たなくても、ガス中のタールの成分組成が分かっていれば、計算で露点を見積もることができます。第2回で紹介したクラス分けは、もともとこのために使われている道具です。

露点で測ることの利点は、判断が直接できることです。測った露点と、その先にある機器の温度とを比べるだけで、そこでタールが凝縮するかどうかが分かります。濃度の数字だけでは、いつ、どこで凝縮が起こるかまでは分かりません。壊れてから直すのではなく、壊れる前に配管を保温する、あるいは除去装置をもう一段足す、という手を打てるのが露点です。

現場で使える指標

正式なタール測定は、設備を建てるとき、改造したとき、トラブルの原因を調べるときには欠かせません。しかし、手間のかかる化学分析は毎日の運転で回せるものではありません。日常の運転では、次のような代わりの指標が役に立ちます。

メタン濃度 第2回で触れたとおり、生成ガス中のメタンが多いときは、タールも多い傾向があります。どちらも熱分解が進みきっていないしるしだからです。ガス組成は連続分析計で測れますから、メタンをタールの代わりの目安として使っている現場があります。例えば、メタン濃度が2%以下なら良好、4%以上なら運転停止、という指標です。

温度 炉出口のガス温度、冷却器出口の温度、そしてエンジン手前の温度測定は必須です。できれば炉内の各層の温度も知りたいところです。前回お話ししたとおり、一次対策が効いているかどうかは、模式図の温度ではなく、実際の炉で測った温度で判断することが望ましいのです。また、露点と比べるためには、ガスの通り道のどこがいちばん低温なのかを、温度計の実測で知っておく必要があります。

差圧 フィルターや冷却器の前後の圧力差が、累積運転時間とともに上がってくれば、そこにタールと微粒子がたまっているしるしです。差圧は容易に連続して測れますから、絶対値よりも「上がってきたかどうか」という傾向を見るのに向いています。

分解点検と目視 定期点検のときに、吸気管、ミキサー、過給機、インタークーラーを開けて中を見ることです。第2回の写真1のような状態になっていれば、通り道のどこかで露点を下回っているということです。なお、付着物の成分を分析するときは、燃料ガスに由来するものだけでなく、潤滑油に由来するものも混ざります。燃料ガスと潤滑油の両方を同時に調べておくと、判断を誤りにくくなります。

運転データの記録 空気流量、燃料流量、給気圧力、給気温度、点火時期といった値を、常に記録しておくことです。トラブルが起きてから測り始めても、何がいつから変わったのかは分かりません。

数字がないと、原因探しは迷走します

最後に、測ることの意味について、経験からひとつ。

ある設備の解説記事に「定常運転時には凝縮性のタール分はない。起動時に若干発生するが、凝縮水分離機で捕捉され、エンジン側でトラブルを起こすことはない」と書かれていました。これが本当かどうかは、受け渡し部でのガス分析の結果で確かめるほかありません。ところが実際の設備では、短い運転時間で、エンジンのすべてのシリンダにタールの堆積が見つかりました。受け渡し部の測定値がないまま、原因は燃料か、部品の材質か、組立か、と探し回ることになり、時間を失います。

もうひとつ。ある設備で成り立った説明が、別の設備で成り立つとは限りません。欧州の木質チップを前提とした説明を、日本のスギやヒノキのチップにそのまま当てはめることはできません。前回お話しした燃料の粒度や灰の性質が違えば、炉の中で起きることも変わります。だからこそ、自分の設備で、自分の燃料で測った数字が要るのです。

おわりに

タール対策の成否を決めるのは、「測る」ことです。測る場所は、ガス化設備とエンジン設備の受け渡し部を基本に、除去装置の前後を加えます。測る量はタール濃度、露点、微粒子、そしてガス組成と温度・差圧の四つです。正式な測定にはタール・プロトコルがあり、日常の運転にはメタン濃度や差圧といった代わりの指標が使えます。そして、どの数字を見るときも、どの方法で、どこで測った値なのかを確かめること。これが今回の要点です。

次回は「タールが着いた先」をテーマに、給気系に粘着したタールがエンジンの中で何を引き起こすのか、逆火や異常燃焼のしくみも含めて解説します。

参考文献

  • CEN/TS 15439:2006, “Biomass gasification — Tar and particles in product gases — Sampling and analysis”, European Committee for Standardization (2006)
  • “Tar measurement standard for sampling and analysis of tars and particles in biomass gasification product gas”, ECN-RX–04-047, Energy research Centre of the Netherlands (2004)
  • “Tar measurement in biomass gasification, standardisation and supporting R&D”, ECN-C–06-046, Energy research Centre of the Netherlands (2006)
  • “Tar dewpoint analyser; For application in biomass gasification product gases”, ECN-C–05-026, Energy research Centre of the Netherlands (2005)
  • Neubert, M. et al., “Experimental comparison of solid phase adsorption (SPA), activated carbon test tubes and tar protocol (DIN CEN/TS 15439) for tar analysis of biomass derived syngas”, Biomass and Bioenergy, 105, 443–452 (2017)
  • Van Paasen, S. V. B., Kiel, J. H. A., “Tar formation in a fluidised-bed gasifier”, ECN-C–04-013 (2004)/ECN タール露点計算サイト Thersites
  • FAO, “Wood gas as engine fuel”, FAO Forestry Paper 72, Food and Agriculture Organization of the United Nations, Rome (1986)

監修者プロフィール

香月正司 大阪大学名誉教授(燃焼工学)。燃焼・熱工学の研究者として大阪大学で長く教鞭をとり、現在はバイオマスのガス化・燃焼やガスエンジンの実務課題についてPEO技術士事務所に助言している。本シリーズの監修を担当。

ガス化発電設備のタールトラブルや、設計・運転上の課題について、設備を販売しない第三者の立場からの助言が必要な場合は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。技術士法第45条により、いただいた情報は秘密保持契約の有無にかかわらず保護されます。

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この記事を書いた人

笹内 謙一のアバター 笹内 謙一 代表取締役 / 技術士(総合技術監理・衛生工学部門)

株式会社PEO技術士事務所 代表取締役。技術士(総合技術監理/衛生工学部門)、技術士登録番号87790号。大手プラントエンジニアリング会社を経て、2019年に当事務所の代表取締役に就任。バイオマス発電・ガス化発電の技術評価、燃料乾燥装置の開発、事業性評価を専門とし、設備を販売しない中立の立場で発注者側の技術支援を行っています。経済産業省「令和6年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(バイオマス発電設備の事故防止のための調査)」では、固体バイオマス燃料の燃焼・火災・爆発の原理と事故の類型化を扱う章を執筆。NEDO「バイオマス技術導入ガイドブック」、日本木質バイオマスエネルギー協会「バイオマスボイラー導入マニュアル」の作成にも関与。木質チップ乾燥装置 Dried Sieve®(特許第7875570号)の発明者。バイオマスガス化発電の係争案件では、裁判所選任の技術鑑定人を務めています。

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